食はその土地、そこに住む人、そして歴史などを色濃く反映した固有の文化で、様々な特徴と魅力がある。その楽しさを多くの人に味わって貰おうと、世界各国のお料理を提供する、アレッタというレストランをオープンさせた。
工場生産が主流となる中、敢えて手仕事にこだわったのも、それぞれの料理人の感性というフィルターを通して作り出される、料理の個性を大切にしたかったからだ。同じレシピでも、そこに料理人の真心、こだわり、誇りなどのエッセンスが加わることで、その店独自の魅力が生まれてくる。いいお店とは、その様に人が作り出していくものだと思う。
街の魅力もまた、人で作られる。その魅力について、アメリカの作家、テリーピンデルが提唱した6つの要素というものがある。
(1) The Cheers Factor ・・・ 人々が楽しく会話する光景があること
(2) The Foot Factor ・・・ 散歩や徒歩でのショッピングが楽しめること
(3) The Cake Factor ・・・ 文化的な刺激や楽しみがあること
(4) The Someplace Factor ・・・ そこにしかない固有の魅力があること
(5) The Comfort Factor ・・・ 街の雰囲気が気持ち良いこと
(6) The Fudge Factor ・・・ 意外性があること
確かに、こんな街は魅力的だと思いつつ、ふと時計を見ると18時を回っている。そろそろアルコールが恋しい時間だ。今企画でお世話になったBAR AWATOは店の直ぐ近く。宮崎の最年少ソムリエとして名を馳せたオーナーの粟戸君だが、実はカクテルも得意。面白いオリジナルカクテルでいつも楽しませてくれる。ふらふらと歩いて向かう中、四季通りにあるお気に入りの花屋apaiserの前を通る。オーナーの八木さんの姿が見えたので、先日お願いした周年祝いの花の評判が大変良かったことを伝える。若草通りの角まで来ると、宮崎にコーヒー文化を根付かせようと頑張る、恋史郎コーヒーの田中君が何やら店先で話をしているのが目に入る。お見送りだろうか。仲の良い常連さんとの会話は尽きることがない。AWATOに着くと友人の錦田社長がビール片手に熱く何かを語っている。この夏の短パンの新商品についての様だ。自社ブランドを立ち上げ、宮崎カジュアルとしての短パン普及を目指す彼の夢には本当に刺激を受ける。穏やかな時間の流れの中、宮崎という街の魅力を味わうひと時となった。
ここには有名ブティックも世界的に有名なレストランもない。しかし、ピンデルのいう街の魅力は確かに、そしてあちこちに存在する。今回はそんな街の魅力を作り出す9人の方をご紹介した。楽しい会話や文化的な刺激、固有の魅力、意外性、心地よい雰囲気、これらは人によって作り出されるものだと思う。そしてあなた自身も、そういった人々と触れ合うことで街の魅力となり溶け込んでいく。さぁあなたも、街に繰り出し、街の魅力を作り出す10人目になりましょう。
株式会社アレッタファインレストランズ
代表取締役 葛和伸隆
[STAFF]
Publisher Nobutaka Kuzuwa
Director Hidenori Yoshida
Photographer Tsuneharu Doi
Illustrator Kazuhiko Ifuku
Copywriter Saburo Nibun
Designer Hidemasa Yoshino