URATACHI COLORS ARCHIVE

進化が止まらない、
U R A T A C H I
G O U R M E T 事情。

 注目のグルメエリア、「ウラタチ」の進化が加速している。その牽引役となっているのが、ヒネリの効いたグルメ店の数々だ。簡単にジャンル分けできないクセの強いコンセプトに、深いこだわり、そして、一瞬で客を魅了してしまう個性豊かな店主たち。説明するのももどかしいそんなインパクト大の「ウラタチ」グルメの最前線へ、今回はもっとディープに迫る。まずは、昼呑みでもしようか。ビアガーデンも進化しているらしいし。

~「ウラタチ」の更なる進化を期待させてくれるキーパーソン3 人に訊く、「ウラタチ」の現在と未来~

串焼しろきじ 若草通店/ 福吉 正明

株式会社白雉代表取締役。中央通の「しろきじ宮崎本店」をはじめ、スタンダードに一歩先ゆくアイデアを盛り込む独自の経営戦略で、続々と人気店を生み出す。飲食界における若きリーダーの注目株。

カフェ チョムチョム/ 小鶴 恵美

ベトナムに1 7 年通い続け本場そのままの味を修得。「カフェ チョムチョム」オープン前には現地の師匠の所に泊まり込んで腕を磨いたという情熱の持ち主。宮崎におけるベトナム料理の伝道師として期待を集める。

i w a n a g a 食堂/ 岩永 光明

大手グルメサイトで今も上位に君臨する有名焼肉店「みょうが屋」を後進に任せ、昨年1 0 月、新たに「i w a n a g a 食堂」をオープンさせた。飲食業界の事情通であると共に、良きアドバイザーとしても人望が厚い。

「今のウラタチ人気を支えるのは、〝わざわざ足を運ぶ価値がある店〞だと思う」…… 岩永

--注目を集める「ウラタチ」ですが、皆さんがここに出店を決めた理由は何ですか?

岩永光明さん(以下岩永) 僕はここいら辺に昔から愛着があってね。というのも、実は広島通りで20年ぐらい店をやってたんですよ。それに、お客さんがわざわざ足を運ぶ店にしたかったから、ちょうどいい距離感だったんですね、「ウラタチ」は。
福吉正明さん(以下福吉) 僕も実は10年ぐらい前に、文化ストリート界隈に店を出す計画があったんですけど、不動産の権利関係が複雑で(笑)。ずっと心残りだったんですけど、ある日たまたまバーで知り合った人が不動産の方で、「いいとこありますよ」って紹介されたのが、「串焼しろきじ 若草通店」の場所です。確かに岩永先生のおっしゃる通り、わざわざ人が足を運んでくれる場所だから、という魅力はありますよね。
岩永 先生はやめてください(笑)。
小鶴恵美さん( 以下小鶴) 私が店を出す決め手になったのは食材です。実は、福岡と宮崎、どちらに出店するか迷ってたんですけど、宮崎にはハーブや野菜など東南アジア料理には欠かせない食材がたくさん揃っていることを知って、私以外の誰がこの食材を使って美味しいベトナム料理を作るんだって勝手に盛り上がってしまって。それに、この辺りってアジア料理の店が集中しているでしょ。たぶん偶然だと思うんですけど、ベトナム料理店が一軒もないんですよね(笑)。
福吉 そうですね、宮崎にこんなエスニックなエリア、他にありませんね。
岩永 いっそこの辺りを〝アジアンストリート〞と銘打って、もっとアピールしたら面白いんじゃないですか。タイ料理の「まんごや」やシンガポール料理の「ラクサ」、それに老舗の韓国料理店「タバン草乃家」とか有名店だけでもこれだけ充実している場所って宮崎では他にない。宮崎に居ながらにしてアジアを食べ歩きできるなんて素敵ですよね。
小鶴 そうそう。マップを作るって話を度々耳にするんですけど、これがあまり進んでいないみたいで。やきもきしていたら、このフリーペーパーで紹介されるのが先になってしまいました(笑)。


「これからは、飲むならニシタチ、食べるならウラタチ。一緒に盛り上がっていきたい」…… 小鶴

--実際にお店を出したからこそ分かる「ウラタチ」の良さや魅力とは何ですか?

岩永 昨年10月に店出したばかりだから、あまり印象は変わりませんが。やっぱり人通りが少ないってことかな。もちろん、これは自虐じゃなくて、この街の確かな魅力なんだと僕は感じています。だって、ここがニシタチみたいになったら、わざわざここに店を出す理由も、お客さんがここに来る理由も無くなってしまう。風俗店は無いし、誰もがのんびり安心して来られるし、街づくりや雰囲気づくりもしやすいんだと思います。福吉さんの店もそんな「ウラタチ」の環境にマッチしたスタイルだから人気になっているんだと思いますよ。
福吉 お客さんが店を選んで来てくれるのは、とても良いことですよね。僕も最初、夜遅い店が少ないからそこを狙ってこの店を始めたんですけど、そういう流れじゃないんだと分かり、きっぱり諦めました。それで、昼から呑める今の業態に変えたんです。ニシタチとか繁華街では逆に難しいかもしれませんが、「ウラタチ」では無理なく受け入れてもらっているように感じています。
岩永 僕の店は、メニューの看板とかも出してないし、口コミじゃないと来られない。お客さんにとことんいい食材を使った料理を食べて欲しいからこんな形態にしているんですけど、だからといって他の隠れ家と一括りにされるのは嫌で(笑)。夫婦でやっているし、突然団体で来られても困っちゃうのはあるけど。そんな店のわがままというか、在り方が自然とお客さんに伝わる雰囲気が、「ウラタチ」にはあるのかもしれないですね。
小鶴 確かに人通りは穏やかですけど、流れはあると思います。後はそれをどうキャッチするかなんだと思います。私にできることは、お客さんを飽きさせない工夫を心掛けることと、私の店を目指してきてもらえるような、ワンランク上の味を徹底して追及していくことです。もちろん、現実は大変です。オープンしてまだ1年ですけど、当初はお昼もやっていたんです。でも、夜もやって昼もというのは私にはちょっと無理でした。店名の頭につく〝カフェ〞はその名残です。
岩永 僕も週2程度で昼呑みをやろうと思ったことがあったんですけど、体力的にキツイなと。そうこうしているうちに、福吉くんの店が昼呑みをやり始めたから僕はもういいかなって。
福吉 有り難いことに店を任せられるスタッフがいてくれましたから。
岩永 彼は人を育てるのが凄くて。お世辞抜きにどの店にも優秀なスタッフがいて、きちんとそれぞれの店を盛り立てているんです。素晴らしいですよ。
福吉 そんな、とんでもないです。「ウラタチ」の店は夜8時半がオーダーストップですから、さぁこれからっていうお客さんもいるんですけど、それは理解していただかないといけませんし。そういう意味では、僕もスタッフも、お客さんにはたくさん甘えさせていただいています。
岩永 お客さんには甘えさせていただいています、か。これいいフレーズですね。今度使います(笑)。
小鶴 私も、いいですか(笑)。
岩永 甘えられるお客さんがいるということも、「ウラタチ」の魅力なんだと思いますね。不特定多数のお客さんが群がる繁華街と違って、こっちはお客さん同士のコミュニケーションが取れている印象がありますし、恐いお兄さん風の人が闊歩しているという荒れた雰囲気もない。一言でいえば、街と人に品があるんです。それに昔からここで暮らす方々による、通りや商店街の組合があって、会費は払わないといけないけれど、それなりの交流が生まれ、結束力も保たれている。あまり目立たないけどそれが地域性というか、「ウラタチ」を基礎で支える力になっているんだとも思います。
福吉 僕の店のお客さんは、既存店から流れてやってきてくれる方も確かにいますけど、それに負けないぐらい新規の方も多いですね。
岩永 僕の店もそう。まったく予想していなかったけど、新規の方が多いんです。「ウラタチ」が新たに人を呼び込んでいるというか、進化している証拠かもしれませんね。
小鶴 そんな風にどんどん知らない店や新しい料理に興味を持ってもらえると、私の店ももうちょっと助かるんですけどね(笑)。
岩永 これは、宮崎の県民性だと思います。新しいものを欲しないから、新たな喜びに出会えない。分かっていてもそれでいいと思える緩さもまた魅力ではあるんですけど。でも、少しずつですけど、そんな見えない殻を破る人が増えているように感じています。


「エリア全体を巻き込んだ、野外イベントとかやりたいですね」…… 福吉

--みなさんがこれから「ウラタチ」でやってみたい事、これから未来の「ウラタチ」に期待することは何ですか?

小鶴 再開発による新しい宮崎駅ビルが来年秋に完成しますから、それに向けて街もどんどん盛り上がって行くんだと思いますね。既に広島通りの方は、少しずつですけど店が増えているような気がしますし。
岩永 「ウラタチ」からさらに春日や広島通り、宮崎駅の方まで、面を広げての展開が期待されているんだと思います。
福吉 グルメをメインにした野外イベントとか、分かりやすいカギとなるイベントがあれば、みんなで盛り上がれそうですね。でも、僕はその先頭は切りたくないです(笑)。
岩永 僕も(笑)。ただ、実際に参加するかどうかは別にして、どうせやるなら「ウラタチ」ばかりではなく、周辺の街全部でやった方がいいし、そうした方が「ウラタチ」の認知は高まるんだと思います。
福吉 この間、ハシゴ酒のイベントがあって参加させていただきましたが、やっぱり少ないより多い方が賑やかでいいですね。だからもっと積極的に参加する店が増えて欲しい。
小鶴 3年前、この辺りを下見したことがありました。落書きだらけのシャッターが並ぶ寂しい通りでしたが、その時と今を比べたら言葉もありません。それが、さらに賑やかになる機会が訪れようとしているなんて、今から楽しみです。
岩永 駅の再開発は確かに活性化の起爆剤になるとは思いますけど、大切なのはこの「ウラタチ」をどんな街にしていくかだと思う。今より賑やかになるのはいいけど、ニシタチみたいに歓楽街然とした街にはなって欲しくないですから。
福吉 賑やかさだけで比べたら、今の「ウラタチ」はまだ全然、ニシタチより大人しいし、飲むならニシタチで済ませようという人も圧倒的に多いんだと思います。でも、それはまだ「ウラタチ」の本当の魅力に気づいていないからなのかもしれませんよね。
小鶴 ニシタチの賑やかさは「ウラタチ」には似合わないし、似合ってしまう街になって欲しくはない。ニシタチも「ウラタチ」も魅力のある街ですけど、成り立ちや性格は全然、違うと思うんです。飲むならニシタチ、食べるなら「ウラタチ」というか。お酒だけじゃなくて、食事もしっかり楽しめるのが「ウラタチ」の大きな魅力であり、強みだと私は感じています。
岩永 なるほど。だとすれば、「ウラタチ」にもっともっと新しい魅力を持った店が増えて欲しいですね。個人的に強く願うのは、現地そのままの味とスタイルで勝負する中華料理店とか、きちんとした魚料理が出せる大人の定食屋。ありそうでないんですよ、宮崎にそんな店が。
福吉 なんか流行る雰囲気、ばんばん感じますね(笑)。
小鶴 私がもう一つこの「ウラタチ」に店を出すなら、バインミーというベトナムのサンドウィッチか麺に特化した店ですね。
岩永 人に任せるんじゃなくて僕自身が店を出すなら、カレー屋とかですかね。これだけは、人に任せられない。
福吉 僕は、うーん・・・。
岩永 いいえ、福吉さんなら何を出しても大丈夫。
福吉 先生・・・!
岩永 先生はやめなさい(笑)。

串焼しろきじ 若草通店

昼間から賑やか。料理は串焼きがメインで、定番の焼き鳥から豚、牛まで幅広く揃う。おすすめは、高鍋のブランド地鶏、黒岩土鶏が味わえる『おまかせ』で、牛や野菜巻き、口休めも付くという豪華さ。これ一品でじっくりと飲める。

住所:宮崎市橘通東3 - 6 - 3 富山ビル1 階
電話:0 9 8 5 - 8 6 - 6 8 8 0
営業時間:1 2 時~2 1 時( O S 2 0 時3 0 分)
定休日:不定

カフェ チョムチョム

「美味いベトナム料理は、下ごしらえで決まります」と小鶴さんご夫婦。メニューを開けば、新鮮な素材を使った本場顔負けの料理が百花繚乱。人気N o .1は『南部の揚げ春巻き』。フランスにあるベトナム料理 店をイメージしたという店内の雰囲気も素敵だ。

住所:宮崎市橘通東3 - 5 - 2 9 みとよビル1 階
電話:0 9 8 5 - 7 8 - 0 6 1 0
営業時間:1 8 時~2 3 時( 料理O S 2 2 時)
定休日:月曜・月1 回火曜

i w a n a g a 食堂

ファッションに例えるなら、高感度なセレクトショップ。肉は宮崎牛、綾豚、刀根鶏、鹿児島六白黒豚などで、魚介はすべて天然。おすすめは複数人でのコース利用。「良い部位をどんどん盛り込めるから」と岩永さん。予約が無難。

住所:宮崎市橘通東3 - 3 - 7 福田ビル1 階
電話:0 8 0 - 2 7 9 0 - 8 6 7 9
営業時間:1 7 時30分~2 3 時
定休日:月曜

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| 編集後記 |

 かつて百貨店城下町としてファッショナブルなブティックやセレクトショップが軒を連ねた若草通り、四季通り、ハイカラ通り。アレッタが出店した13年前にはかつての活気が失われつつある、あまり元気のない街であったと記憶している。そんな界隈が近頃素敵なグルメ街になりつつあることを、皆さんはご存じだろうか?
 「居心地の良いカフェができだしたな」と感じたのは数年前。その後じわじわとお洒落な飲食店が増えだし、今では本格的なバーも開店し、一次会から三次会まで楽しめるグルメエリアになりだした。
 人気店の出店がエリア集客を促進し、そこに釣られてまた名店が出店するという良い流れが続いているようだ。こういう集積効果が街の魅力を作りだし、相乗効果が街に活気を生みだす原動力となる。この街がもっと活気に溢れるよう、お洒落な隠れ家グルメが点在するこのエリアを“ウラタチ”と名付けることにした。
 裏という言葉を調べてみると表の反対側、裏面、外面に対する内面、隠された面などとある。裏という言葉にはどこか秘密めいた響きがあり、大人心を擽るお洒落なニュアンスが漂っていると感じるのは僕だけだろうか?
 ファッションの世界では、1990年台後半から2000年初頭にかけて“裏原宿”が一代ムーブメントとなりお洒落の代名詞となったし、熊本では“上之裏通り”というレトロで趣深い雰囲気の隠れ家グルメスポットが若い女性の間で人気になっている。
 僕の中での裏はお洒落で、ちょっと背伸びをした大人の世界、ワクワク感を表す言葉で、正にこの界隈にふさわしいネーミングだと一人悦に浸り、ニヤニヤとグラスを傾けている。
 今宵、訪れたのは最近“ウラタチ”にオープンした「BARたむら」。宮崎の名店「バトラー」に居られた田村君が独立して出されたお店で、彼の醸し出す独特の雰囲気が素敵だ。変形のカウンターの中央にはカクテルメイク専用のステージがあり、目でもカクテルを楽しませてくれる。
 今日はどこで食事をしようか、二軒目はどこに寄ろうか、〆はあの辺りで・・・。日々そんなことばかり考えている“ウラタチ”フリークとしては、こんな居場所がドンドン増えてくれることが嬉しくて堪らない。
 最近では焼き肉の名店「みょうが屋」さんが業態を変えてお店を出されたり、焼き鳥で有名な「しろきじ」さんが昼飲みのお店をはじめたり、またピザで全国的にも有名になった「ステッサ」さんがスタンドカフェをオープンさせたりとグルメな話題に事欠かない“ウラタチ”から益々目が離せないこの頃である。
 街ぶらが楽しい季節になりました。あなたも是非“ウラタチ”探検に出かけませんか。


株式会社アレッタファインレストランズ
代表取締役 葛和伸隆

[STAFF]

Publisher Nobutaka Kuzuwa
Director Hidenori Yoshida
Photographer Tsuneharu Doi
Illustrator Kazuhiko Ifuku
Copywriter Saburo Nibun
Designer Hidemasa Yoshino

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