トラウマを克服する旅へ!

訪れた場所:ソウル(韓国)

10年以上前の話だが観光タイアップで韓国フェアを行った際、“ビビンバ発祥の地“全州に行ったことがある。仁川空港に到着するや否やロケ車に乗せられ移動すること3時間、やっと到着し車を降りると、いきなり女性二人が取っ組み合いの喧嘩をする場面に遭遇し大変驚いた。宿泊先も文化財だという伝統的な韓屋(ハノク)を特別にご用意頂いたが、門限が早い上に酒・タバコ一歳は禁止。オンドルの部屋には敷布団はなく、薄い掛け布団だけ。しかも男二人の相部屋でイビキがうるさくて眠れず、二泊予定を一日で切り上げてソウルに逃げ帰ったというセンセーショナルな韓国デビューであった。
それ以来、韓国に対するイメージは微妙で再訪することがなかったが、最近Netflixの韓国ドラマにハマり、興味が芽生えてきた。さて、久しぶりの韓国ではどんな体験が待っているのだろう。

手堅くミシュラン二つ星店に

韓国で何を食べたいかと聞かれると、選ぶのが本当に難しい。焼肉、参鶏湯、冷麺、サムギョプサル、カンジャンケジャンなど、美味しい料理がたくさんあって迷ってしまう。歳をとると一日三食しっかり食べるのも大変に感じることがあるが、韓国の美味しい料理を前にするとあれもこれも食べたくなってしまう。先ずは手堅くミシュラン星を訪れることにした。

狎鴎亭ロデオ駅から徒歩7〜8分のところにあるミシュラン二つ星の「권숙수(クォンスクス)」へいくことに。近頃ソウルでは、既存の韓国料理を革新的にアレンジした料理や、旬の食材を使ったモダンな韓国料理を、ファインダイニング形式で提供するレストランが人気らしいが、ここはそんなブームを牽引する人気店の一つです。韓国全土をシェフ自ら回り、見極めた生産者から取り寄せた材料を使い、使用する調味料も全て自家製、伝統的な韓国の調理法を駆使し作られるお料理はどれも秀逸でした。
中でも朝鮮王朝時代に、王様の公式な食事とは別に来客を歓待する際に出されたお酒と肴の膳、「酒案床(チュアンサン)」をイメージしたという前菜が素晴らしかった。豆皿に盛られたお料理の数々、合わせて提供された日本酒のような伝統酒がまたベストマッチで感服しました。
他にもキムチのワゴンサービスの演出や、キッチンツアーでシェフの説明を聞きながら頂いたスペシャリテだという鮑とキャビアを使った一品などなど、全ての体験が感動的でした。

ローカルグルメも見逃せない

ソウルでの二日目はゆっくり起きてブランチへ。韓国に来たら、やはり参鶏湯は欠かせないですね。そこで言わずとしれた景福宮近くの大人気店「土俗村(トソクチョン)」に。韓国の伝統的な家屋「韓屋(ハノ)」を活かした雰囲気抜群の店内で頂くお料理がまた最高。折角なので、かつては宮廷でのみ食べられていたオゴルゲ(烏骨鶏)を使ったオゴルゲタンを試してみました。見た目は真っ黒で少しグロテスクですが、身が引き締まっていて味がより濃厚、薬効は参鶏湯よりも高いそうです。食べていると体がポカポカと温まり汗が出てきます。これは元気になるやつですね!
でも一番気に入ったのは、韓国の定番合わせ味噌「サムジャン」をディップして食べる生ニンニク。隣の若い韓国人カップルが食べていたので真似してみたが、これがとても美味しかった。生のニンニクを丸ごと食べるというスタイルは、日本ではあまりしませんが、韓国ではよく見られる光景で、今さらですが新しい発見でクセになりました。

カンジャンケジャンに感動

韓国に来たら絶対に食べたいのが「カンジャンケジャン」、生のワタリガニを醤油ベースのタレに漬け込んで熟成させた伝統的な海鮮料理です。新鮮で身がしっかりしたワタリガニは、韓国ならではの楽しみで見逃せません。
2018年から7年連続でミシュラン、ビブグルマンに選ばれている「ケバン食堂」は、アパレル出身のオーナーが、母の秘伝の味を受け継ぎ開店した大人気店。あいにく本店が定休日だったので、明洞から電車を乗り継ぎ30分ほどの聖水店に行ってきました。
モダンでおしゃれな空間で、ワタリガニの名産地、西海岸の瑞山(ソサン)のメスワタリガニで作る絶品カンジャンケジャンが楽しめる幸せ。とろけるような食感とカニの甘さ、ご飯に混ぜて食べると感動ものです。食べ終わった直後にまた来たいと思うほど、どハマりしてしまいました。

またすぐに来たいと思う街

帰国当日の朝、最後のソウル飯として訪れたのは1939年創業のコムタン専門店「河東館 本店(ハドングァン)」。明洞の繁華街にあり、泊まっているホテルからも歩いて数分、7時から開いているので、朝の散歩ついでにちょうど良い立地です。大統領からの再三の出前依頼を断り続け、結局大統領自ら食べに来たという逸話があるお店です。
江原道産の韓牛メスの内臓と牛の胸肉を、約6時間ゆっくり煮込んで完成させるらしく、スッキリと透き通ったスープがとても美味しい。胃にも優しい朝ごはんで、幸せな気分を満喫しました。このワンメニューで85年続くなんて凄すぎ、同業者として敬意を表します。
三日間の短い滞在でしたが、二回目のソウルは感動の連続でした。美味しいものばかりで、また来なければいけないという気持ちが止まらない。今回のソウルへの旅は10年越しのトラウマを克服できた有意義な旅でした。

written by Nob2

20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。

上部へスクロール