
ハノイ、美食とコーヒーの三日間

訪れた場所:ハノイ(ベトナム)
料理もサービスも、記憶に残る店(Gia)

▲水上人形劇
昼過ぎにノイバイ空港に到着し、荷物を置いて街を散策しつつ、タンロン水上人形劇へ向かいました。千年以上の歴史を持つベトナムの芸能で、伝統楽器の生演奏と歌声が旅情を添えます。
コミカルで軽快な人形劇を楽しんだ後、予約していたハノイのミシュラン一つ星「Gia」へ。店名は“家族”を意味する「Gia đình」に由来するそうです。季節で変わる現代ベトナム料理の12品コースが楽しめます。
まずは前菜4種、「ナスとヨシエビ」「豚肉とパパイヤ」などから。冬に甘さが増すカボチャ、紅河の干潟のヨシエビ、旧正月テトに欠かせない豚の煮凝り「thịt đông」の再構築など、ベトナムの冬を連想させる品々が続きます。ここは食材の組み合わせを楽しむスタイルのようです。
調理法の幅も広く、コースへの期待感が高まりました。家の型をしたメニューは、屋根をめくると料理の説明が現れる仕掛けでオシャレ。
続いて「コールラビと豆腐」。切干大根とサキイカの白和えに近い印象でした。さらにコーヒーパウダーとチリペッパー。遊びがあるのに、きちんと収まっていて感動です。

▲家の形をしたメニュー

▲前菜4品

▲ブンタン再構築
この後も、ベトナムの定番を現代的に組み替える皿が続きました。最も印象的だったのは、ハノイ名物「Bún Thang(ブンタン)」を進化させた一皿。セルクルで整えた具材にスープを注ぎ、混ぜながら食べるスタイル。深い旨みが折り重なる味わいでした。デザートは「サツマイモとキャッサバ」。コースの締めにコーヒーが付かないのは、この街の濃厚なカフェ文化のせいなのでしょうか。
どの料理も美味しく、加えてサービスも印象的でした。説明は過不足なく、会話の邪魔をしない距離感があります。大満足で店を後にしました。夜気が心地よく、ホテルまで歩くことに。明日は世界遺産「ハロン湾」へ。朝が早いので、早めに休むことにします。
コーヒーブームのその先を感じる店(The Running Bean)
ハノイ三日目の朝、昨日一日かけて世界遺産のハロン湾周辺を見て回った疲れがまだ残っています。ゆっくりと起きて市内を散策することにしました。
旧市街にあるミシュラン、ビブグラウマン店「Pho So 10 Ly Quoc Su」にてランチ。人気店でかなり並びましたが、良さは掴みきれませんでした。そこから徒歩でハノイ大教会へ。実は向かいにあるカフェに行ってみたかった。ハノイは、料理だけじゃなくコーヒーも面白いのです。

▲ハロン湾

▲大人気店のフォー

▲バーのような店内
ホアンキエム区、教会通りの「The Running Bean」。空気はカフェというより、どこかバーに近い雰囲気。ステージのようなカウンター内側で、バリスタが鮮やかな手つきで一杯を組み上げています。面白すぎて、アレンジコーヒーを三杯も飲んでしまいました。
中でも「ウベコココーヒー」は、紫芋の濃厚な甘みとコーヒーの苦味が重なり、見た目も味もきちんと輪郭が強い一杯。日本でもカフェが人気だが、“その次”の形は、こうした空間で嗜好品を愉しむ方向へ、移るのかもしれません。
もう一軒、印象に残ったのが「ノートコーヒー」。メモシールにメッセージを書いて店内の好きな場所に貼れる仕掛けで、壁から天井までシールで埋め尽くされています。圧倒的な視覚体験で、世界各国からの旅行者で賑わっていました。
そこで初めて飲んだエッグコーヒーは、カスタードを飲むような濃厚さ。好みは分かれそうだが、飲み物というより“デザートとして完成している”といった印象。次は別のアレンジも試してみたいです。

▲メモだらけの店内

▲エッグコーヒー
やっぱり主役はフォー(T.U.N.G.)

▲レストラン外観
ハノイ最終日は、シェフ、ホアン・トゥンが率いるモダンベトナミーズ「T.U.N.G.」へ。
北欧にて、素材の純度を極限まで高めるアプローチや、分子調理を学び、それらを伝統的なベトナム料理と融合させて、独自の世界観を作り出している名店です。
ゲストへのサプライズを大切にした店づくりは驚きの連続。お料理には、それぞれ一枚のカードが添えられ、素材や調理法の説明が記されていたり、ドリンクはワインだけでなく、ビールのペアリング提案があるなど、ワクワクが止まりません。

▲メニューカード

▲ビールペアリング

▲驚きのフォー
別添えの熱いスープと一緒に口に運ぶと、一瞬で脂が溶け出し、あのお馴染みの「フォー・ボー」の香りが立ち上がります。その発想の飛躍こそが、現代ガストロノミーの醍醐味だと感じました。
南部のホーチミンに続く、二都市目のハノイ。千年以上の歴史をもつベトナムの首都は、歩くほどに魅力が増す街でした。南北の食文化の違いにも触れ、学びの多い旅となりました。
written by Nob2
20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。



