日本の酒造りって、凄いんです!

訪れた場所:東京・鹿児島

 2024年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録された「日本の伝統的酒造り」。日本各地の風土、祭りや儀式など、地域文化と深く結びつきながら発展してきたこと、そして日本固有の麹菌を使った酒造りの知識と技術が、評価されました。対象は日本酒だけでなく、本格焼酎や泡盛、みりんまで含まれます。今回は、そんな日本の伝統酒を実際に味わい尽くすお話です。

驚きのイントロダクション

 まず訪れたのは東京・池尻大橋にある燗酒専門店「高崎のおかん」。燗酒のペアリングを専門に扱う、珍しいお店です。カウンター八席のみの小さな空間ながら、店造りへのこだわりが徹底しています。真正面にはステージのような花板、それを囲むように湾曲したカウンター。その中央には、温度の異なる二台の熱燗器が埋め込まれていました。まさに“熱燗を楽しむため”に設計されたお店です。

▲高崎のおかん外観

▲カウンターに埋め込まれた熱燗器

 さらに驚いたのが燗付けの道具。ガラス、錫、銅、ステンレス、チタンの五種類を使い分けるそうで、それぞれ料理に例えて説明してくれました。ガラスビーカーは熱伝導が穏やかで、蒸し料理のように柔らかい。錫は丸みを帯びた味わいで煮込み料理。銅はキレがあり、焼きのイメージ。ステンレスは回しながら温めていき、揚げものの仕上がり。そしてチタンは、薪料理のようなニュアンスだとか。このこだわり、なかなかの徹底ぶりです。

 ひと通り説明を受けると、店内アナウンスが流れてスタート。メニューはなく、マッチに印刷されたQRコードを読み込むスタイル。最初から最後まで、驚きが続きます。

周到なペアリングに脱帽

▲金目鯛の硫黄塩

 先付けは蛸の飯蒸し。まずは凌ぎ、という位置づけ。一品目は、金目鯛とりんごに硫黄香の塩。合わせる燗酒は、仁井田本家の秋上がり。愛媛県産レモンの皮を加え、錫で68℃。
 炭酸水を追いかけて飲むと、口の中がレモンサワーのようになる仕掛け。いきなりインパクト大です。

▲かい海苔の天ぷらと雲丹

 続いて、静岡県富士市「長谷川農産」のマッシュルームに、かい海苔天ぷらと雲丹。合わせるのは、滋賀のクラフトミードの樽を使った熟成酒「haccoba skey skey honey」。ガラスビーカーで58℃に燗付け。こんなお酒もあるのだと、初めて知りました。

 その後もこだわりの料理と熱燗の驚きのペアリングが続きます。中でも、黒むつの蕪蒸し、ルッコラとこごみ餡掛け。この日、特に印象に残った一品です。お酒は“ジンの香りがするどぶろく”(ぷくぷく醸造×辰巳蒸留所)。
 〆は「亀の尾」の炊きたてご飯。糠漬けやメヒカリ、卵を添え、卵かけご飯は黄身と白身を分けて味わいます。赤だしと共にいただきました。

▲黒むつの蕪蒸し

▲久留米「山の壽酒造」のフリークス1

 先付けからデザートまで全10品、燗酒ペアリング7種でした。まさに“お酒づくし”のコース。食材から空間まで、すべてにオーナーの想いが詰まった時間でした。

 何でも簡単に手に入る時代だからこそ、誰が、どんな想いで食材を集め、調理し、提供しているのか。その営みと責任がきちんと見える場所であることが、有難いとしみじみ思いました。また来たい、そう思えるお店です。日本人で良かった!

九州の焼酎だって、見逃せない

 続いて訪れたのは、鹿児島の焼酎専門店「S.A.O.」。叔父から引き継いだというバーを、焼酎愛たっぷりのマスターが切り盛りしています。知識も深く、話も尽きない。
 スタートは朝日の「100周年ボトル」。ソーダ割りにすると、驚くほどすっきり。黒糖焼酎のイメージが変わりました。次に気になったのが、大海酒造の「アップルランス」。低温発酵による吟醸香は、アップルやラ・フランスを思わせる爽やかさ。芋焼酎とは思えない一杯です。

▲黒糖焼酎「朝日」

▲リンゴの香「アップルランス」

 さらに、宮崎・渡邊酒造場の芋を、小牧醸造が仕込んだ限定品「萬年コマキ」をいただきました。合わせるのは、店主の奥様お手製の生チョコレート。使われているのは、都城・柳田酒造の「栃栗毛」という焼酎。これが合うんです。

 ここから拍車がかかり、頑なに昔の製法を守る「八幡」、復活芋で仕込んだ「蔓無源氏」、萬膳酒造の完全無濾過「ニシキ」へ。最後は、大山甚七商店の「アコウカシス」のソーダ割。青森産の手摘みカシスを使った国産リキュールで、甘さ控えめで実に飲みやすい。好みでした。

▲宮崎焼酎の生チョコ

▲国産カシスのソーダ割り

▲S.A.Oの鳥刺し盛り合わせ

 こちらは、料理屋で修行したマスターの料理も抜群。おすすめは鳥刺し。酒だけで終わらないのが、この店の強さ。鹿児島を満喫できる、頼れる一軒です。

おわりに

 今回は、日本の伝統酒、熱燗と焼酎が楽しめるお店を紹介しました。旅の醍醐味は、やっぱり地元料理。郷土料理には、その土地の気候や地形、人々の歴史が映し出されています。
 そして、そこに欠かせないのが地元のお酒。南北に長い日本列島。涼しい北では米の醸造酒、温暖な南では芋などの蒸留酒が育ちました。その違いを味わうのも、旅の楽しみの一つです。ぜひ、日本の酒と食の奥深さを、実際に味わってみてください。

written by Nob2

20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。

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