歴史と食が重なる古都台南へ

訪れた場所:台南(台湾)

▲林百貨店

 高雄から特急列車で34分。台湾南部の旅も折り返し地点を迎え、古都・台南に到着しました。港町の開放感が印象的だった高雄とは対照的に、台南は台湾の歴史と文化、そして食が何層にも積み重なった街です。ホテルに荷物を預け、まずは1665年建立、台湾最古の孔子廟へ向かいます。清朝時代には「全台首学」と称され、台湾最高学府だった場所。孔子が祀られる大成殿には歴代皇帝から贈られた額が掲げられ、かつての教室「明倫堂」や学問の神を祀る文昌閣を巡るうちに、台南が“学びの都”であったことを実感します。
 孔子廟から徒歩1分、ビルとビルの隙間の奥にある「窄門咖啡館」は、狭い通路の先にひっそりと佇むお洒落なカフェ。「狭き門より入れ(天国に至る道は困難で険しい)」というイエスの言葉に由来し、狭き門より入り、幸せになってほしいという店主の想いが込められた、素敵な店名のお店です。ここで頂いた特製トースト(たぶんメロンパントースト)と金柑茶が、やたらと美味しかった。

▲窄門咖啡館

台南名物・担仔麺を味わう

▲度小月の担仔面担仔麺

 ランチは1895年創業、行列のできる人気店「度小月担仔面」にて、台南グルメの定番・担仔麺を堪能します。台南発祥の小ぶりな汁麺で、豚挽肉の旨みが凝縮されたスープに、海老やもやし、パクチーをトッピングした台湾のソウルフード。魚の獲れない“小月”に、魚の代わりとして天秤棒を担ぎ、麺を売り歩いたことが名前の由来だそうです。
 高雄で食べ逃した牡蠣のスープに加え、台南名物の肉燥飯なども頂きましたが、何より印象に残ったのが腸詰。香り、脂、歯切れ、どれも最高で、日本に買って帰れないのが本当に残念です。

▲牡蠣のスープと腸詰

▲店頭での調理風景

 食後は三国志でお馴染みの関羽を祀る台湾最古の関帝廟「祀典武廟」、航海の女神・媽祖を祀るこれまた台湾最古の廟「大天后宮」、オランダ統治時代のプロヴィンシア城を起源とする国定古跡「赤崁楼」などを巡り、古都台南の街並みをじっくり味わいました。

▲祀典武廟

▲赤崁楼

▲人気店「安平豆花」の豆花

 カナダの留学時代、トロントのチャイナタウンで出会って以来、ずっと恋し続けている「豆花」も久しぶりに食べられて幸せな気分に。予約しておいたディナーまで少し時間があるので、ホテルに戻ってひと休みします。

古都の夜はモダンフレンチで

 夜は街の中心部から少し離れた隠れ家レストラン、ミシュランセレクティドのモダンフレンチ「啢啢餐桌」へ。三階建ての一軒家で、一階のキッチンを抜けて二階席に上がると、ナチュラルテイストのモダンな内装が心地よい空間が現れます。満席のテーブルは100%ヤングアダルトのカップルで、還暦の爺さんはちょっと浮いているかも(笑)。

 マリネしたチェリーにクリームチーズを詰め、ラディッキオを散りばめたアミューズからスタート。チャバタに添えられたアンチョビガーリックバターも良い感じです。からし菜の漬物に鮑とカリフラワー、よもぎの天ぷらを合わせ、柚子で風味付けした前菜は、フレンチというよりイノベイティブな印象。浅利、ブリュノワーズした山芋、もち麦のスープには、生姜を効かせた出汁がテーブルで注がれ、香りも味も申し分なし。メインのボストン産活ロブスターは程よい火入れで、デザートまで含めて満足度の高いコースでした。

▲アミューズ

▲アサリのスープ

 独学で日本語を勉強中だというギャルソンの明るい接客も印象的で、大変楽しい時間を過ごすことができました。

市場で朝から食い倒れ

 台湾最終日の朝は、水仙市場の食堂「石精臼蚵仔煎」からスタート。名物の牡蠣オムレツは、小粒の牡蠣とでんぷんを混ぜたモチモチの生地を卵で包み、甘い餡掛けソースをたっぷりとかけていただく一品。餅のような食感は初体験でしたが、すっかり気に入りました。

▲牡蠣オムレツ

▲肉燥飯、白菜の旨煮、春雨の炒め物

 すぐ隣の「江川肉燥飯」では、肉燥飯、白菜の旨煮、春雨の炒め物を。どれも日本人の口に合う味付けで、かなり美味しい。おかずの種類も豊富で、近所にあれば通い詰めたいお店です。

 さらにもう一軒、ぜひ訪れたかった「赤嵌棺材板」へ。揚げた食パンをくり抜いた器に、とろりとしたクリームシチューを詰めた台南発祥のB級グルメで、四角いパンが棺桶に似ていることから「棺材板(棺桶パン)」と名付けられたそうです。約80年前から愛され続ける元祖の味は、どこか懐かしい洋食の風情がありました。

▲赤嵌棺材板

▲棺材板(棺桶パン)

 最後に、街をぶらぶら散歩しながら立ち寄ったのが、狭い路地に佇む煎餅の老舗「連得堂煎餅」。レトロな機械で今も手焼きされる煎餅は、素朴で力強い味わい。おすすめの味噌味と卵味をゲットして、帰路につきました。

▲路地に佇む「連得堂煎餅」

▲煎餅作り

台南という街が残したもの

 歴史や信仰が今も日常の中に息づき、気取らない食がそのすぐ隣にある。台南は、そんな風景がごく自然に成立している街でした。老舗の担仔麺から、挑戦的なモダンフレンチ、市場の屋台や路地裏の煎餅屋まで。そのすべてが、一本の線で静かにつながっているように感じられます。派手さはなくとも、時間をかけてじんわりと心に染みてくる味わい。台南は、そんな記憶を残してくれる街でした。

written by Nob2

20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。

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