
高雄でミシュランはしご!

訪れた場所:高雄(台湾)

▲美麗島駅の光のドーム
今回は、穏やかな空気と港町らしい開放感に包まれた高雄にて、食べ歩きを楽しみました。ミシュラン星の名店を一日に二軒巡る“ダブルヘッダー”と、土地に根付いたローカルグルメ散策。高雄という街を、食を通して味わい尽くす旅の始まりです。
広東料理から始まるグルメ旅
まずは、広東料理の名店「GEN by Matt Chen」のランチから。洗練された内装に包まれた店内は、静けさと緊張感がほどよく共存する、大人のための贅沢な空間です。

▲アミューズ
トマトのピクルスと大根のバルサミコ漬けのアミューズに続き、蓮根のツミレ揚げ、キクラゲと胡瓜の酢の物。熟成させたワインビネガーの酸は角が取れ、素材の輪郭をやさしく際立たせています。台湾で親しまれる魚の皮は、スパイス塩と卵白の衣で軽やかに揚げられ、サクサクとした香ばしさが心地よい。安定感のある前菜が続き、自然と期待が高まります。

▲キングプラム
羊の骨を5時間かけて煮出したスープは、澄み切った味わいの中に深いコクを湛えています。ホロリとほどける肉をチリ醤油で味わえば、旨味の輪郭がよりくっきりと浮かび上がる。続くキングプラウンは、押し麦やカリーリーフ、赤パプリカ、ネギなどを合わせたシリアルをソースのように絡めて食べる一皿。盛り付けはやや素朴ながら、スパイスの重なりが楽しく、料理人の遊び心が伝わってきます。

▲鴨の瓢箪詰めクリスピー焼き
メインは、鴨の首の皮に鮑、鴨肉、蓮の実、餅米を詰め、瓢箪型に焼き上げたスペシャリテ。テーブルサイドで、鶏などから丁寧に引いた濃厚なソースを絡める演出は圧巻です。キヌワと米の上に盛られた料理に惜しみなく注がれるソース。重層的でリッチな味わいが口いっぱいに広がり、昼食とは思えぬ充足感に包まれました。
締めは、鮑ソースをベースにした香港スタイルの自家製麺の焼きそば。香ばしい焼豚が添えられ、心も腹もすっかり満たされます。

▲大港橋の回転ショー
食後は、高雄港の古い倉庫群をリノベーションした文化・芸術の複合施設、駁二芸術特区(Pier-2 Art Center)へ。天候にも恵まれ、穏やかな時間を過ごしました。圧巻は、全長110m、アジア最長の旋回橋・大港橋(Great Harbor Bridge)の回転ショー。ダイナミックな動きと港の景観が重なり、印象的な光景を生み出します。
日本と台湾がコラボしたコース

▲HAILIのエントランス
ダダブルヘッダーの第二戦は、ミシュラン一つ星「HAILI」。店名は日本語の「ハイ」と中国語の「リー」を掛け合わせた造語で、日本で培った技法と、母と妻へのオマージュが込められているそうです。
幕開けは、豆腐の白玉入りの温かいスイートコーンポタージュに、ウニの冷たいクリームを添えた温冷を楽しむ一皿から。続く屏東県産の鰻は香ばしく焼かれ、蕎麦粉のクレープで大葉や茗荷と包み、タコスのように軽快に仕上げられています。中東で使われるスパイスで、レモンのような爽やかな酸味と旨味が特徴的な“スマック”を効かせた長崎産鯖は、トマトのジュレやナス、バジルのソースと好相性が印象的なお料理でした。
甘鯛は鱗を残した松笠焼きに。花椒をほのかに効かせたソースと春菊のペーストが寄り添い、柑橘を搾れば表情が変わる。続いて供される台湾朝ごはんの定番中の定番「鹹豆漿(シェントウジャン)」をモチーフにした一品は、豆乳のやさしい旨味に白子と辣油が溶け込み、台湾の朝の記憶を呼び起こします。

▲甘鯛の松笠焼き風

▲白子の鹹豆漿風

▲鍋焼意麺を再構築
鍋焼意麺を再構築した皿では、揚げ麺の代わりにパリパリの米麺を用い、エビワンタンと魚介のラビオリという東西の要素を一皿に同居させています。煮蛸にパンプキンムースとコンソメ、イクラを合わせた一品を経て、メインのカナルルージュへ。ローゼルの酢漬けとハンダマ、ワサビがアクセントとなり、記憶に残る余韻を残します。
デザートはタルトタタンの再構築。料理、空間、サービスが高い次元で調和し、再訪を自然と考えさせる一軒でした。
ローカルグルメも見逃せない
高雄に来たら外せないのが「肉燥飯(ロウザオファン)」。ご飯に豚肉の煮込みをかけて食べる屋台飯の定番です。北部の魯肉飯が、脂ののったバラ肉に八角を効かせた濃厚な味わいなのに対し、南部では赤身中心であっさり仕上げるのが特徴のようです。
前金肉燥飯はミシュラン・ビブグルマンにも選ばれた人気店。平日の朝9時前でもなかなかの混み具合でした。肉燥飯に魚のふりかけと半熟卵を追加し、これまた台南名物のサバヒーのスープ「魚皮湯」と一緒にいただきます。あっさりとした味わいは台北のものとは別物で、好みは分かれそうですが大好きになりました。

▲前金肉燥飯

▲肉燥飯

▲美迪亞漢堡店の鍋焼意麺
続いて、高雄定番の朝食、鍋焼意麺(グォーシャーイーミェン)の人気店へ。揚げた卵麺に、カツオや昆布、豚骨などから取った濃厚なスープ、豚肉や魚介、野菜を合わせた鍋焼うどん風の一杯。独特の麺の食感が楽しく、正直、昨晩頂いたアレンジ版よりもこちらのオリジナルに軍配が上がりました。
朝食後は、龍虎塔から壽山觀景台を巡り、フェリーで旗津區へ。漁港が近い高雄では、新鮮な魚介を手頃な価格で楽しめます。

▲龍虎塔

▲壽山觀景台

▲旗津區フェリー
活かにの茹で、白魚の天ぷら、牡蠣の炒め物を選び、台湾ビールとともに味わう時間は格別でした。高雄灯台、旗津星空隧道、旗津彩虹教堂など、旗津エリアはサイクリングで巡るのに最適な場所。穏やかな一日を締めくくるにふさわしい時間が流れます。

▲海忠寶活魚産の店頭

▲牡蠣の炒め物

▲茹で活かに
旅の余韻
ミシュランの一皿から屋台の朝食、港に吹く穏やかな風まで。高雄の食は、特別と日常が無理なく同じテーブルに並ぶ。土地の気候や人の営みが、そのまま味に姿を変えて現れるような体験でした。
食べ歩くほどに、この街は観光地ではなく、確かな生活の温度を持つ場所として記憶に刻まれていきます。港町・高雄。次に訪れるときも、きっとまた、まずは一杯と一皿から始めることになるでしょう。
written by Nob2
20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。



