
伊万里で衝撃的なイタリアン

訪れた場所:伊万里市(佐賀県)
食べログイタリアン全国二位という高評価店の上に、カウンター五席のみというハードルの高さでなかなか予約できなかったお店に奇跡的な空きが!これは見逃せないと即予約で行ってきました。こちらのお店、仕込みはせずにその場でお料理を作り上げていく『a la minute』スタイルが売りだという。これを聞いただけで食欲が唆られてしまいます。
福岡から伊万里までは高速を使えば1時間あまりと、非常に便利になったのであっという間。ということで、今回は伊万里の小旅行グルメレポートです。
ハンバーグはやっぱり奥が深い

▲チムニーの店内
先ずは地元の人気店「チムニー」でランチを。昔ながらの洋食屋といった雰囲気の店内は、常に満席でウェイティングがかかっています。さすが食べログ百名店ですね。地方でレストラン探しをすると、評判の良い店にはハンバーグ店が多く、ハンバーグをよく食べるのですが、これが意外と奥が深くて面白い。素材に地域色がよく出るし、成形、焼き方、ソースなど調理法のバリエーションも様々で、シェフの個性が発揮されて面白い。こちらのお店もそんな魅力ある一軒です。

▲デミグラスソースのハンバーグ
サラダ、スープに続いて昔懐かしい“牛の形をした鉄板”に乗って現れたハンバーグは、たっぷりのデミの海に浮かんでいて食欲をそそります。ここはこのデミソースが売りに違いない。本格的なデミグラスソースは、若干の苦味で大人テイスト、深みのある味が堪りません。ジューシーな伊万里牛との相性抜群。やっぱりハンバーグは”外れが無い永久欠番”ですね。
鍋島焼きの故郷を散策

▲陶器商家資料館
焼き物の積み出し港として栄えた伊万里、今ではすっかり寂れていますが、かつての名残りもちらほらと。せっかくなので伊万里の歴史も学んでおこうと「陶器商家資料館」に立ち寄り、ボランティアガイドの方に丁寧にご案内頂きました。これがなかなか面白かった。
その後は秘窯の里「大川内山」に。江戸時代、鍋島藩が最高技術を門外不出として管理した藩窯があった場所で、現在でも30軒ほどの窯元が、伝統的な製法や技術を守り続けています。狭い谷間にレンガ造りの煙突が立ち並ぶ景観がとても魅力的です。
個人的には磁器より、手作り感のある陶器の方が好みだが、絵付けの技術の素晴らしさには感動を覚えました。この伝統が17世紀から続いていることに感銘を受けました。

▲大山内山の街並み

▲印象的な煉瓦の煙突
ホテルに荷物を置いたら、タクシーで今回の目的地に向かいます。見えてきた外観は、ちょっと想像と違い今風でカジュアル。広めの店内に5席だけのこじんまりとしたカウンター、期待が膨らみます。席についていよいよ“お任せコース”のスタートです。
目的地となり得るレストラン

▲塩とミルク
先ずは十六種ミックスのハーブティーで胃を整えた後は、シグニチャーともいえるメニュー「塩とミルク」の登場です。来店とほぼ同時に作り始めたリコッタチーズは、唐津の幻の香酸柑橘「ゲンコウ」とレモンを使った自家製。五島列島福江の花潮と一緒に提供され、これまた焼き立てのブリオッシュと共に頂きます。衝撃の旨さです!

▲伊万里牛のタルタル
続いて、あまり熟成させず屠畜10日目の経産牛が登場。本日はこの牛が様々なスタイルで提供されるとのこと、ワクワクが止まりません。先ずはカルパッチョ、そして目の前でチョップされたタルタル。自家製魚醤のアクセントが素晴らしく、バケットとの相性も抜群。一緒に提供されたのはイワシのスープ。ミキサーにかけたイワシに水を加えて火にかけ、濾してスープだけを抽出したもの。シンプルさが魅力の逸品です。
お次はイタリア・ブーリア州の揚げパン「パンツァロッティ」。佐賀のいちごが入り、勿論これも目の前で成形した揚げ立てが提供されます。すべての調理工程が目の前で行われ、もはやこれはエンターテインメントです。
唐津七山のムキタケと生姜、伊万里の無農薬米を使ったリゾットは牛脂が入っていて味と食感が素敵。こういうアプローチもあるのだと感心しきり。甘さのあるワインとのマリアージュがまたいい。

▲カッペリーニ
牛出汁で冷ましたカッペリーニは、爪の先ほどの発酵バターを使い乳化させた新玉葱と塩のスープと共に頂きます。こんなにシンプルなのに、何故こんなに美味しいの〜。不思議、不思議!

▲伊万里牛
牛脛肉と新玉葱のタリオリーニ、牛もつと原木椎茸のスープでお料理はフィニッシュ。デザートはパンナコッタ、優しい甘さと酸味、クリンミーな仕上がりで美味かった。
3時間程のディナーでしたが、楽し過ぎてあっという間でした。仕込みはせずにその場で作り上げていく『a la minute』スタイルは非常に独特。やれるメニューも限られるし、とにかく時間との戦いだからかなり難しいとは思いますが、素材の良さを最大限に引き出したお料理はどれも美味しくて驚きのクオリティの高さ。これはもはやシェフというよりサムライ、戦いの日々ですね。大満足で店を後にしました。
伊万里のグルメは奥深でした
急遽決まった小旅行、目的の食べログイタリアン全国二位の実力は素晴らしかった。ついでに地元で人気のハンバーグ店や、これまた行列必須の有名ドライブインなど、伊万里グルメを満喫できました。窯元の見学など、結構楽しめるので、皆さんも伊万里への小旅行楽しんでみてはいかがですか。
written by Nob2
20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。



