
釜山、食の密度を歩く四日間

訪れた場所:釜山(韓国)
南浦洞、市場の熱気とチョッパル
焼酎はどこから来たのかという問いには、シャム(現タイ)から琉球を経由して伝わったという説、中国大陸から「倭寇」が持ち込んだ説、朝鮮半島の高麗酒が壱岐や対馬へ伝わり、日本で広まった説の三つがあります。いずれにしても、蒸留という技術がシルクロードを渡って中国、韓国、日本に広まっていったようで、言ってみればこれらはみな兄弟のようなものです。焼酎を学んでいると、こうした知識も自然と増えていき、アジアの酒造りにも興味が湧いてきます。ということで、今回は釜山へやってきました。
初日は、国際市場やチャガルチ市場がある釜山を代表する観光エリア、南浦洞へ向かいます。
目指すは、韓国の豚足料理・チョッパルの専門店が軒を連ねる「チョッパル横丁」にある元祖釜山チョッパルです。
中国にもよく似たメニューがあり、学生時代を過ごしたカナダでは、香港から来た留学生とチャイナタウンでよく食べていましたが、日本ではあまり見かけません。ここぞとばかりに直行です。
当然、この店に来たらノーマルに加えて、発祥と言われている「ネンチェチョッパル」も外せません。韓国の伝統酒、ソジュと一緒にいただくととても味わい深い。仕事柄、食い意地だけは人一倍ですが、もう歳です。小サイズでもかなりの量で、さすがに食べきれず残してしまいました。この時点で、この街の食の強さを実感しました。

▲チョッパル

▲ネンチェチョッパル

▲釜山ダイヤモンタワー
その後は国際市場をぶらぶらと散策し、釜山ダイアモンドタワーへ。東京タワーのように、新しい施設に押されて少し寂れた印象はありますが、「星の王子様」をモチーフにした装飾はなかなか良く、写真スポットとしては面白い試みです。
夜は富平カントン市場のナイトマーケットへ。巨大チキンとナッコプセを食べるつもりでしたが、お腹が空かず断念。ホテル近くの居酒屋「ジョンヤジェ」にマッコリを飲みに行くことにしました。フルーツマッコリは1リットル単位で提供され、これまた量が多い。なんとか飲み終え、念願の生マッコリへ。独特の麹の香りが心地よく、今回のテーマともどこか重なります。

▲フルーツマッコリ

▲生マッコリ
松島と甘川文化村、そしてナッコプセ

▲松島海上ケーブルカー
二日目は松島からスタートです。海岸線に沿って作られたケーブルカーで、半島の突端にある展望台まで向かいます。片道10分ほどですが、晴れ渡った空と海を一望できる景色は、人気観光地であることに納得です。
さらに移動して、東洋のマチュピチュと言われる甘川文化村へ。確かに景色は美しいのですが、マチュピチュは少し言い過ぎかもしれません。ただ、さびれた街の再生としては素晴らしく、観光客の多さからもその成功ぶりが伝わってきます。のんびり散策するのにちょうどいいサイズ感の街です。
昼は初日に食べ損ねたナッコプセをリベンジ。チャガルチ駅のすぐ近く「ケミジプ本店」に。蛸を意味する「ナクチ」、牛ホルモンの「コプチャン」、海老の「セウ」、それぞれの頭文字をとって「ナッコプセ」。
これらをコチュジャンベースの甘辛いタレで煮込んだ鍋のような料理で、デジクッパやミルミョンと並び、釜山三大グルメの一つと言われています。日本人相手に容赦のない辛さで、ご飯が進みすぎてしまいます。
夜は以前から行きたかった地元で人気のビストロを予約しているので、昨日の二の舞にならないようセーブします。

▲ナッコプセ

▲ケミジブの由来
海雲台、海と刺身、そして一皿
三日目は、韓国でも有数のビーチリゾート、海雲台へ。まずは高さ約411.6mを誇る展望台「釜山エックスザスカイ」へ。99階にある世界一高い場所にあるスターバックスでラテを頂きました。高層から見渡す海と街の景色は圧巻です。
ランチは海沿いの海鮮料理屋「バクオクフィハルメジプ」にて、センソンフェ(韓国風刺身)。タイ、クロソイ、スズキの盛り合わせに加え、鮑、エビフライ、サンナッチなどが次々と並びます。さらに茹でタコや枝豆、コーンマヨネーズ、蜂の子まで付いてきて驚きます。このオカズの多さが韓国らしい。

▲99階のスタバでラテ

▲韓国風の刺身
胡麻の葉に包み、サムジャンをつけて食べるスタイル。甘辛い味噌だれと胡麻の葉の香がたまらない。日本の刺身とは異なりますが、これはこれで非常に美味しく、食べ方を含めて完成された料理だと感じます。ものすごくハマってしまいました。
午後は海雲台ブルーラインパークへ。旧鉄道施設を再開発したエリアで、海辺を走る列車やスカイカプセルが人気を集めています。沿線にはカフェやレストランも多く、街の魅力をうまく引き出した好例だと思います。

▲海雲台ブルーラインパーク

▲スカイカプセル

▲牛功幹の蕎麦
夜はミシュランセレクションの「牛功幹(ソゴンガン)」へ。洋食出身のシェフが手がけるフュージョン料理で、韓国の要素を取り入れた構成です。フェやユッケのアレンジに始まり、魚料理、肉料理と続き、どの皿も完成度が高い。特にソースの仕上がりが素晴らしく、味の組み立てに確かな技術を感じます。中でも蕎麦がとても美味しかった。サービスもスムーズで、ワインペアリングもよく考えられていました。ミシュランの星を取るのも時間の問題でしょう。
最終日は再び南浦洞で食べ歩き

▲サムギョプサル
まずはサムギョプサル。韓国に来たら外せない一品です。英語がほとんど通じないおじいちゃんが焼いてくれるのも、また良い雰囲気です。タレ漬けの豚カルビもなかなか美味しくいただきました。
続いて釜山名物のミルミョンを食べに。BTSのRMが訪れたという南浦洞の「ハメル伽耶ミルミョン」の行列に並びました。小麦粉を使った冷たい麺で、素麺のような軽さがあります。これだけにするつもりが、周りのお客さんが食べている餃子にも惹かれて追加。結果的にこちらの方が好みでした。こういう一皿が、記憶に残ります。並ぶ価値のある一皿でした。

▲ミルミョン

▲餃子
三泊四日、今回の視察もよく食べ、よく飲みました。その結果、3キロ増と少々危険な水準に。とはいえ、それだけ食の密度が高い街だということでもあります。
釜山は、名物料理の力強さ、辛味のインパクト、港町ならではの海鮮、そして高い技術を感じるレストランまで、食の幅が非常に広い街です。今回のフィールドワークも、非常に勉強になりました。
written by Nob2
20代からホテル、飲食サービス業に従事、福岡市のホテルイルパラッツォ、北九州市の門司港ホテル、札幌市のジャスマックプラザホテルなどの経営に携わる。2006年、ワールド・グルメ・バイキング宮崎山形屋店をオープンさせ話題に。2019年、全事業を売却しフリーのコンサルタントに。様々な国や地方の食文化を学びながら、モットーである、サービス業を通して「街を元気に、街の暮らしを豊かに」するを実践中。



